忍者ブログ
≡ Admin ≡ Write ≡
[1]  [2]  [3
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

その建物が出来たことは少しも秘密にはされていなくて、
(確かに鳴り物入りの派手な宣伝はしていなかったけど)
興味を持った街の人が、いったり来たり覗いたりで、
その街で知らない人はいないものにはなっていた。
その日、「妖怪館の前でなにやら揉め事が起きてるようだ」の通報がきて巡査長は自転車にまたがると、後に続く若い2人の巡査に軽く声をかけた。
「なぁ、君たちは妖怪館に入ったことあるのかい?」
「いいえ」2人は軽く首を振った後、どちらともなく
「でもいっぺん入ってみたいかな、とは思ってたです。」と気恥ずかしそうに笑う。
「ああー、君たちも若いなぁ。若い子はそうゆうの好きだよね。」
巡査長は懐かしいものを見るときのように一瞬目を細めたが、すぐにペダルをこぐ足に力を入れた。
「とにかく急ごう、ね。はやく着いたがいいだろう」
「はい。」

妖怪館と名づけられたその建物は丘の上にある。
見世物小屋風のお化け屋敷といった風情ではなくミュージアムと名乗りそうな建物だった。
建築時に提出された図面によると資料室と展示室にわけられてて、どこからみても博物館とか民族資料館の呈をなす。
ただそこに展示されているものが、『見る人によって違う』というウワサがあった。
巡査長はその噂を知らなかった。
後の2人は知っていたのだけど。

丘に近づくに連れて、揉め事が起こってるのは一目でわかった。
別に誰かが刃物を振り回してるとかそんなんじゃない。

館の受付らしき人物に殴りかからんばかりの勢いで食って掛かってる男と、狂乱して泣き喚いてる女と息を潜めて成り行きを遠巻きに見守る人、人、人。

巡査長は少し慌て気味に自転車を止めると、とりあえず怒る男をなだめるように制止に入った。
もちろん後の2人も彼に続く。
「で、どうしたんですか。何があったのです?」
すると男は巡査長に怒鳴り散らした。

「こどもがいなくなったんだよ!」




PR
HOME 次のページ >>>
アクセス解析
いらっしゃいませ
忍者ブログ [PR]
○sozai:Sya ra ran*○ Template:hanamaru.